鬼道・シャーマニズムとは、シャーマン(巫女)による宗教的祭祀であります。景行天皇も九州行幸の折、日田盆地に来られたとき、神になった比佐津媛が現れ、迎えられたと豊後風土記に書かれています。
比佐津媛こそ、邪馬台国の卑弥呼なのです。卑弥呼とは日巫女であり、日田市は比佐と言われ、日に向かうところだったのです。この比佐(日田)の地にいた方が久津姫であり、シャーマンであり、日(比)巫女と言われた方です。
景行天皇が鏡のようだ言われた筑後川上流の三隈川(日田市)
「魏志倭人伝」には、「一女子を立てて王と為し、名づけて卑弥呼という。鬼道を事としよく衆を惑わす。」と書かれています。卑弥呼は固有名詞ではなく、呼称であり。卑弥呼(ひみこ)は日(比)の巫女です。
縄文時代は、母系社会の巫女が森羅万象を読み取る呪術(精霊信仰(アニミズム)と祖霊信仰)を使うその地域の首長であり、祭祀王ですが、弥生時代への過渡期は、男王が政治を、巫女が祭祀をと、二人体制でマツリゴトが行われていたのです。ですから卑弥呼は政治的な王ではありません。
鬼道とは、シャーマニズム(巫俗)と関連する宗教儀礼であります。北方系と南方系のシャーマニズムの伝承と融合したものと考えられます。太鼓、鈴、琴、笛などの楽器を使用し、舞踊(アメノウズメの踊り)の中で、トランス状態になり、カミである精霊や祖霊が憑依し、託宣する。原始神道の祭祀(磐座、樹木の依代)から今日の神道儀礼が確立したと言えましょう。
巫女の能力は予知ができ、天地自然と一体となり、雨を降らせ、雨を止ませ、嵐をしずめたのです。そして人々の病気を治し、霊媒(祖霊との交信)、カミの降霊を行う霊媒と言えましょう。
その様は、「古事記」によると、アメノウズメの神憑りに見ることができます。「天の香山で男鹿を獲り、その肩の骨を焼いて占い、榊に八咫鏡や八尺瓊の勾玉をつけ、木綿と麻の幣(ぬさ)を垂らした「御幣(みてぐら)」を持ち、日蔭蔓(ヒカゲノカズラ)を襷(たすき)にして掛け、マサキカズラを頭に巻いて、笹の葉を手に持ち、アマノコヤネが祝詞を唱えると、桶の上に立って、幾度も足を踏み鳴らし、神がかりし 」とあります。これこそシャーマンの舞踊です。
この中の「八咫鏡」とは、咫は大きさ、長さを表すと言われていますが、蛇を象徴しているとも言われています。八咫は、八匹の蛇であり、八頭の龍です。日田市のダンワラ古墳で出土した「金銀錯嵌珠龍紋鉄鏡」(国重要文化財東京国立博物館所蔵)は、八頭の龍が描かれています。
後漢時代の中国鏡で、皇帝級しか持ちえないものです。魏の曹操から卑弥呼に贈られたものとだと言われています。そうであるなら卑弥呼が比佐津媛と言えましょう。景行天皇は祖先を敬うために、邪馬台国に来たのです。
邪馬台を現代では、「やまたい」と読み、発音しますが、当時の倭人、中国人の発音は「ヤマダ」です。日本最古と言われる豪族の環濠集落である「小迫辻原遺跡」の一帯は、山田(やまだ)と言われる地域で、字日向の地名なのです。
日田市は風水上、最も王都にふさわしい地形を有しています。北の玄武には、祖山である英彦山を有し、岳滅鬼山、上宮山など山々が連なり大いなる龍脈を形成しています。そして龍体山の麓に龍穴があります。
日田市全図
さらに真向いの南の朱雀には、権現岳、釈迦岳、渡神岳を有し、「半陰半陽」です。東の青龍には、一尺八寸山(みのやま)、月出山(かんと)があり、大河筑後川の上流の三隈川、玖珠川が滔々と流れています。その様、まるで龍が動いているかのごとくです。西の白虎には、三日月やまなどが連なり、外砂、内砂、明堂が整っています。日田盆地は「まほろば」であり、神仙郷、桃源郷と言えましょう。
そして山田地域は、「背山臨水」であり、小迫辻原遺跡の居城は、「北座南向」に建てられています。卑弥呼の祖先たちが、もっともよい地を求めてこの地に来て、縄文人との共存をはかりながら、暮らしていたのです。次回はこの地に来た人たちが誰かをお話ししましょう。
最後に、今日、シャーマニズムは、神道、修験道や密教(仏教)、沖縄のユタ(ノロ)、恐山のイタコ、日本各地の祭り、神楽などにも見ることができます。日本人の深層の中に縄文時代から続く母なる心が息づいています。
卑弥呼以後、男性原理が強くなり、今日に至るまで、戦争を繰り返しています。今こそ、比佐津媛・日巫女(女神)の蘇りが必要なのです。そして自然を畏怖し、神々と精霊との関係性を大事にする心を取り戻すべきです。
文責:別府武志
参考文献
「ヒミコの系譜と祭祀日本シャーマニズムの古代」川村邦光(大阪大学教授)学生社
「よみがえる女神」 清水友邦(イーハトーブ心身統合研究所主催) ナチュラルS
「日本のシャーマニズム」 堀 一郎(東京大学教授) 講談社
「民間信仰」 堀 一郎 岩波全書
「祭りの古代史を歩く」 彩流社 他。
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