2015年12月23日水曜日

NHK100分で名著「良寛詩歌集」を視て③~「人」や「自然」と心を通わす~


 おはようございます。

 私は良寛研究者でもないし、いわゆる文芸評論家でもないので、良寛さんについて語る資格はないのですが、得度したものとして語りたいと思います。良寛さんは出家僧となって、最も孤独に徹した人だったと思います。また「個」の人だったと思います。


だからこそ、日本の四季おりおりの自然を愛でる人であったのです。日本人は、自然の中の神仏を見出し、自然にとけいり、自然に同化し、自然と共に生きる術を肌で学び生活してきたものです。良寛さんこそ自然人だったのでしょう。


ノーベル文学賞を受賞した川端康成氏は、「美しい日本の私」と題して、日本の自然と日本人の心(精神性)を講演されました。良寛さんもそのことを熟知していた一人ですよね。今日のように拝金主義がはびこっても日本人の精神性の中に、清貧と惻隠が育まれていることは否定できないでしょう


このテキストの第三回の箇所で、「兄弟に対する申し訳のなさ」というところがあるのですが、良寛さんが出家したのち、家督を弟である由之が継ぎ、名主になるのです。この弟が今風にいえば、事業が失敗して、放蕩三昧におちいるようになり、橘屋(実家)は衰退していきます。その息子である馬之助も同様の事を行い、最後は、橘屋は没落するのです。


ほぼ同時代に生きた広瀬淡窓先生と良寛さんを比べることは、たいへん非礼なことだと思うのですが、良寛さんは、儒教や老荘も勉強され仏教を選び出家僧となり、詩人で歌人ですが、一方、淡窓先生は、儒教、老荘、仏教も勉強され、漢詩人であり、教育者でした。淡窓先生は幼少より病弱であったため、ご両親が学問に力を注ぎました。そして咸宜園を開塾し、「心」を育てる教育をしたのです


二人の共通点は、漢詩などを通して「心」を育てることができたし、自らの内面を言語化したということでしょうか。そのことが後世の人にも感動を与えるし人を育てることができているのではないでしょうか。


葉室麟さんは心の教育とは、「「心は即ち能く物を是非して、而も又自ら其の是非を知る」(心は物事の善悪がわかる。それだけではなく、自らの善悪もわかる。)~佐藤一斎~と書いています。


そして、淡窓先生の弟である久兵衛さんが広瀬家を継ぎ、事業を盛り立て、当時の商家として成功します。おそらく咸宜園への経済的援助もしていたでしょう。淡窓先生といわゆる実業家である久兵衛さんは、いつもお茶を飲みながら話し合っていたそうです。


葉室麟さんの小説「霖雨」を読んでいると、その光景が出てきます。広瀬家が今日も英々と栄えているのは、おそらく家訓もあるのでしょうが、やはり兄弟のご縁が深いというか、何事も話しあっていたからでしょう。


その点、良寛さんは、出家していますので、世事には疎いし、ほとんど関わらなかったし、事態が悪化するまで、内実を知らなかったかもしれませんね。悪い言い方をすれば世捨て人ですからね。


もともと弟の由之は、磊落豪放で派手好きなところがあり、いわゆる遊び人的性格であったかもしれませんね。人間には、先天的に持った本性や性質があり、それには吉的なもの(長所)と凶的なもの(短所)がありので、その本性を知っていれば、その後の努力で、短所を抑え、長所を伸ばすことができるのですが、いわゆる事業の失敗とともに自暴自棄になり、遊興三昧におちいったのでしょう。息子の馬之助も同様です。


その点でいえば、広瀬家の人々は、質実で、誠実で、堅実な道を歩んでいますね。子供が三、四人いると一人くらいはいわゆる馬鹿息子がいるのですが、広瀬家にはそのような方は見当たらないようです。


いるし、衰えさせる跡継ぎもいるのです。ですから今でいえば経営者は、誰を後継者にするかで、その会社(家)の盛衰は決まってくるのです。


少し、見当違いな感想になりましたが、やはり良寛さんは、子供と遊ぶことで、無心になっていたし、自然のなかで生きることで、無我や空の心であったし、当代きっての禅者であったことは間違いないのです。私たちは世俗に生きていても良寛さんの生き方を学ぶことで、生きる力を得ることもできるのです


今日はこれくらいにして、いよいよ本日23日午後10時からのNHKEテレ「良寛詩歌集」最終回~「老い」と「死」に向き合う~を視ましょう。それでは皆様のご健勝をお祈りしつつ 南~無 合掌礼拝 徳温禅月。


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