2014年10月23日木曜日

森のなかで

私は龍体山の森の中に、

車を止め、ハッチバックを開け、ゆっくりと座り

足を組み、合掌し、

両手を陽迎印で、ひざの上におき、

意識しながら、静かな呼吸をした

向こうの山の老木が目に入り

その老木に集中した

老木は老人のように叡智にみちていた

老木とこころのなかで語ると、老木は

ただ微笑んでいた

時間はゆっくりとゆっくりと流れていた

わたしは目を閉じ、

森の声を聴くと、

木の葉のざわめき、

小鳥の鳴き声がいくつも聞こえてきた

その小鳥たちのなかでひときわはっきりした

小鳥の声に集中した

小鳥は何かを語っているようであった

そうだ名前をつけようと、ふと文殊という名が浮かんできた

利口そうな鳥の声にぴったしだ

文殊の声に集中すると、他の音は、

まったく聞こえなくなった

文殊の声だけである

ある瞬間、文殊の声が途絶えた時

その一瞬

わたしのこころは 空になった

私は森と同化したようだ

ここちよい安らぎを感じながら

自然にひたった。




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